蜻蛉

長い幼虫時代を水中で過ごした十何兆もの蜻蛉が 羽根の生えた成虫になり 交尾をして 一日で死ぬ 同時に孵化することで 食べられてしまう可能性が減り 交尾できるチャンスが大きく広がる 口も消化器官も持たない蜻蛉が食事をすることはない 水上を飛び ただ交尾する そして水中で死ぬ そこには 人権ならぬ蜻蛉権とか 人道ならぬ蜻蛉道とかは なく その短い命は どこまでも儚い 蜻蛉になった僕が 蜻蛉になった君を探す 死ぬ前に 会えるように いつも一緒の君と 生を終えるように